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マウスピース型カスタムメイド矯正装置(インビザライン)①~特徴と得意な歯並びと苦手な歯並び~

[2022.09.06]

近年、マウスピース型矯正装置(正式名称:マウスピース型カスタムメイド矯正装置 以下マウスピース型矯正装置)の技術が発達し、その対応可能な歯並びも増えてきました。

 

一方で、その取扱い方を熟知せず使用する歯科医師や歯科医師を介在せず行う歯列矯正も増えてきており、日本矯正歯科学会からも警告に近いお知らせが発表されました。

 

https://www.jos.gr.jp/4348 

(公益社団法人 日本矯正歯科学会 ポジションステートメント マウスピース型矯正装置による治療に関する見解)

 

 見た目も良いですし、お食事、歯ブラシの外せるとても良い装置で、まだまだ今後も装置の技術の向上が予想される装置ですが、情報もたくさん増え個人での正しい情報の処理が難しいことになっていると思います。

 

 そこで、コラムにて何回かに分けて、マウスピース型矯正装置についてお話したいと思います。

 

 今回は主にマウスピース矯正装置の概要とさせて頂き、ご自身の歯が適しているか、適していないかの目安をお知らせします。あくまで目安なので、最終判断は歯科医師のもとで行われることをお勧めします。

 

目次

 

  1. マウスピース型カスタムメイド矯正装置について
  2. インビザラインとワイヤーの違いについて
  3. インビザラインが得意な歯の動かし方、かみ合わせ
  4. インビザラインが不得意な歯の動かし方、かみ合わせ
  5. まとめ

 

 

1.マウスピース型カスタムメイド矯正装置について

 

 マウスピース矯正装置のメリットは今まで矯正治療を行う上でどうしてもネックになってきた、見た目、歯磨きしにくくなる、食べ物・食べ方に注意が必要であったことが劇的に改善した点で、患者さんにとってメリットが大きな装置だと思います。

材料は熱可塑性の樹脂を用いており、矯正治療で行う粘土のような型取りを光学スキャンで出来るようになったことも大きなメリットだと思います。

歯科医師のメリットとしては、とにかく莫大なかみ合わせのデータを企業が持っているため、症例に対しての結果についての考察が行いやすく、より良い治療方法について学びやすくなっています。また、Iotでもあり、インターネット上で治療計画を立て、製造はアメリカで行われているのですが、その発注もどこでも簡単に出来るという事です。

 

ただ、歯科医師が介在していない治療計画上では、以下の点で問題となっていることもあります

 

①歯の根っこの形状や位置はあまり考慮されておらず、歯の頭の位置は治っていても骨の中で歯並びがばらばらということもある

②周囲の骨の厚みや状態、歯茎の形態などは考慮されておらず、骨から出るような歯の動かし方を行っている

③上顎と下顎のバランス・噛む強さなど、骨格の要素が考慮されておらず、計画自体が間違っていることや、計画通り動かないことがある

④咬合面(歯の噛む面)覆っていることで、奥歯が歯茎側に沈みこみ、前歯のかみ合わせが深くなりやすい(下の前歯が上の前歯に覆いかぶさってしまいやすい)

⑤装置装着時に負荷される歯や顎に対する荷重の大きさについては不明瞭なことが多い

 

などです。この点は歯科医師が介在しないと改善できないと思うので必ず歯科医師が介在した歯列矯正を行っていただきたいと思います。

 

種類も様々なものがあるので、簡単に紹介します。

①インビザライン

業界最大手であり、絶対王者でもあるインビザライン。Smart track素材といわれる独自の素材で弾性が高く、フィットもより正確になっています。また、Smart Force機能やSmart stage機能など、かみ合わせに応じた治療方法についても莫大なデータにより確立されています。(ある程度なので、その後修正は必ず必要になりますが)歯に付着させるアタッチメントという突起物の種類も豊富で、歯の動きをより正確に再現できるのも良いところです。

②Clear correct

2006年アメリカで開発されたマウスピース型の矯正装置です。 インプラントで有名な歯科の最大手企業ストローマンが提携しており、インビザラインの後発ではありますがマウスピース型矯正装置において2番目の実績を誇っています。以前までは、バイトランプという、マウスピース矯正だとかみ合わせが深くなりやすいのでそれを改善する仕組みがなかったのですが、そこも導入したとのことです。

 

③SureSmile

デンツプライシロナという歯科企業の会社が独自に開発した装置です。システムが非常に複雑ですが、CTを併用して細かい情報を考慮し治療されているそうです。

 

④Spark

  オームコ社の開発したマウスピース型矯正装置です。

こちらの装置はこの夏、日本に初上陸したので情報が少ないのですが、歯の根っこ部分を正確に再現して治療計画上に反映できる装置とのことです。

⑤Angel align

 中国ではインビザラインとシェアが拮抗している香港上場企業です。

 

⑥その他、ダイレクトプロバイダー(キレイライン、スマイルダイレクト、Oh my teeth)

 歯科医師が介在しないタイプのマウスピース矯正装置です。ごくごく軽度の歯並びの乱れであれば治療可能かもしれないですが…

 

この中で当院はインビザラインを使用しています。

 

2.インビザラインとワイヤーの違いについて

 

簡単に表にまとめましたので、一度ご確認ください。

  マウスピース矯正
(インビザライン)
ワイヤー矯正
(マルチブラケット装置)
治療方法 透明で薄く柔軟性のあるマウスピースを1日に20時間以上装着して歯を動かす ブラケットと呼ばれる歯にワイヤーを固定する装置とワイヤーを装着して歯を動かす
特徴 食事や歯磨きの際には取り外すことが可能 一度歯に矯正装置を固定してしまったら、自分で取り外せない
通院頻度 2ヶ月に1度 1ヶ月に1度
適応症例 不得意な症例もある 全ての症例に対応している
自己管理 装置が適合しているかセルフチェックが重要 歯科医師が管理するので、あまり必要ない
見た目 ほとんど気にならない 白い装置もあるが、ある程度気になる

 

その他、よくある質問としては、痛みについて歯を動かく際の副作用について(歯肉退縮や歯根吸収)です。

 

 痛みについては、インビザラインの方が、従来のタイプのワイヤーの装置(結紮線でワイヤーを保持するタイプ、当院のセルフライゲーションタイプとは異なる)より痛みは少ないといわれている論文は多いです。あと、インビザラインで痛みが強いとおっしゃる方はインビザライン自体の変形が原因と言われていますので、取り扱いには十分注意してください。一つ注意点ですが、ここで述べた痛みに関しては、患者さんの主観のアンケートによるものが多く、例えば、体内の痛みを感じるトリガーになる発痛物資の量を調べたといったものではないので、どちらが痛くないのかは少し信憑性に劣る気がします。今言える事としては、マウスピースを使用している患者さんの方が、歯が動くときの痛みは軽度だったとおっしゃる方が多いという事です。

 

 歯根吸収についてですが、歯が動くとき、どうしても歯の先が少し短くなる現象が起きます。少し短くなっても歯の生存率だとか、虫歯や歯周病になりやすくなることはないので問題ないのですが、極端に短くなる方もいらっしゃいます。柔らかいワイヤーで治療した場合とインビザラインとでは大きな違いはないとされています。

 

 歯を動かす際の副作用として、歯肉退縮があります。歯茎が下がって歯の見える面積が大きくなっている状態で、進行すると歯の根っこまで見えしみやすくなることがあります。これに関しては主観的評価になるのですが、インビザラインの方が歯肉退縮される方多いと感じます。歯肉退縮の大きな原因として、歯を動かす際、一方向に動かしているときよりも、歯が行ったり来たりしてしまう(唇側、舌側など)と歯肉退縮が起こりやすくなります。インビザラインのつけ外しを頻繁にすると、歯が行ったり来たりしてしまうので歯肉退縮なりやすいのかなと考えています。

 

 

3.インビザラインが得意な歯の動かし方、かみ合わせ

 

 インビザラインでの治療で得意なかみ合わせというのは、予定されていた動き通り、歯が動いてくれるかどうかで決まります。予定どおり動いてくれやすいかみ合わせの方を予測実現性が高いかみ合わせという言い方をしており、一般的には以下の方が予測実現性が高い方になります。

 

・歯と歯の間に隙間がある症例(空隙歯列)

・上顎の奥歯を後ろに移動させる症例(臼歯遠心移動)

 

・前歯がかみ合っていない症例(開咬)

・軽度の歯並びの乱れ(軽度叢生)

・補綴している歯が少ない

・歯の長さ(歯冠長)が十分ある

・抜歯を伴う矯正治療でも歯の傾きのみで治療可能

 

 

4.インビザラインが不得意な歯の動かし方、かみ合わせ

 

予測実現性の低い方は以下の通りになります。

 

・歯の傾きのみでは治せない抜歯症例

・奥歯の大きな移動を伴う症例(臼歯の大きな近心移動)

・顎関節症などで下顎の位置が安定しない方

・かみ合わせの深い症例(上顎前歯の圧下、上方への移動、咬合湾曲が大きい)

・歯の長さが短い方(歯冠長が短い)

・補綴の歯が多い方

 

5.まとめ

 

 今でも充分いい装置ですが、今後さらなる進化を遂げるであろうインビザラインを始めとしたマウスピース型矯正装置ですが、まだ治療計画を立てるなどは歯科医師が介在しないと難しい場合が非常に多いです。さらに、予定外の動きをした際、一部分ワイヤーの装置にて立て直すことがあります。そういった意味でも、矯正治療に従事した方に治療される方が良いと思います。

口腔内の最大の仕事は、咀嚼嚥下を含めた飲食・呼吸・発語です。歯並びだけ綺麗になったところでそのような機能が損なわれてしまうと本当の意味での美しい笑顔は達成できないです。是非とも、正しい診断の下、治療を開始していただきたいと願っています。

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