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矯正治療の抜歯の基準~抜く必要があるかないか矯正医がみるポイント~

[2022.04.29]

矯正治療を希望される方にとって

歯を抜く治療になるのか(抜歯を伴う矯正治療)

歯を抜かない矯正治療なのか(非抜歯にて行う矯正治療)

 

自分はどちらなんだろうと気になるポイントであると思います。

 

まず、なぜ歯を抜く必要がある事があるのか、健全な歯を抜いても良いのかということについてお話します。

 

 

歯を抜くという可能性がある患者さんの特徴として

・口元の突出感が強い方

・歯並びのデコボコ(叢生)が多い方

があります。

 

両者に言えることは、顎の大きさ(もしくは歯並び)の大きさに対して、歯の大きさの合計の方が大きいという事で並びきるスペースが足りないためにデコボコの歯並びになったり、前歯が前に突出したりします。

という事は、まず歯を並べるためのスペースが必要になってきます。

 

 

歯を並べるためのスペースを確保する方法としては以下の5通りがメインとなってきます。

  1. 歯並びを横に広げる
  2. 奥歯を後方に送り、歯並びを後方に広げる
  3. 前歯を前に出して歯並びを前方に広げる
  4. 歯の大きさを少しずつ削合する(IPR、Diskingといわれる手法)
  5. 永久歯を抜歯する(小臼歯抜歯)

 

 

まず、1. 歯並びを横に広げる、側方拡大についてです。

 

歯並びを横に広げることは、スペースを確保する手法としては非常に有効です。

 

元々の歯並びの横幅が狭い人には特に有効で、診断時に矯正治療計画を考えるうえで、まず横に広げることで何とか改善できないかと試行錯誤します。

ただ、元々そこまで幅が狭くない人に対し、過度に幅を広げた治療を行うと、安定せず後戻りするか、ずっと保定装置(後戻りをキープするための装置)をつけることになります。

右と左の犬歯を真横に結んだ距離(犬歯間距離)を大きく変えてしまうことが、後戻りをひき起こすことは、もう矯正治療を行う医師の中では一般常識になっています。

側方拡大は元々の歯並びの横幅が狭い人に積極的に行う処置といったイメージです。

 

 

次に2. 奥歯を後方に送り、歯並びを後方に広げる、臼歯遠心移動という手法です。

 

遠心移動は歯の移動としては動かしにくい動きではありますが、近年、矯正用アンカースクリューの台頭により以前よりも格段に行いやすくなりました。

では、どこまでも歯は後ろに移動するのでしょうか?

もちろんそういうわけではなく、後方余地という、奥歯の後ろに動かせる余地がどのくらいあるのかという指標があります。これを無視して奥歯を後ろに動かす計画を立ててもいつまでたっても動きません。

さらに上下奥歯の噛み合わせのバランスもあるのでその動きはさらに制限があります。

個人差はありますが、後方への移動は後方余地にゆとりがあるかたでも2~3mmくらいが限界であることが多いです。

 

 

3.前歯を前に出して歯並びを前方に広げるこれはどうでしょうか?

 

前歯がすでに前に突出している方は絶対良くないのはイメージが湧くかと思います。

 

ただ、矯正中の歯の動きの特徴として、スペースがないのに歯を無理やり並べると、前歯は横でも後ろでもなく必ず前に出て並べるためのスペースを確保します。

 

近年、芸能人の方でも正面から見ると歯並びが綺麗に並んでいるけど、横から見ると口元が出ている、前歯が前方にあり口が閉じにくく、唇がいつも閉じていないといった方を見かけます。

 

文章にすると、前歯が前にある人の前歯をさらに前に出すといったことなんてありえないと思われるでしょうが、顔の位置に対して前歯の位置を決めずに矯正治療する医師では比較的起こりうることなので注意が必要です。

 

 

4.歯の大きさを少しずつ削合する(IPR、Diskingといわれる手法)は歯のサイズを小さくして並べようという考え方です。

 

1本の歯の側面を0.5mmずつ削合してスペースを作ります。

 

これは歯の外側のエナメル質の範囲で行うのでこれにより、歯にダメージがあるといったことはありません。

 

 

そして5.の歯を抜く抜歯を伴う矯正治療ですが、歯の動きと横顔の見え方をシュミレートした結果、前述した方法では並ぶためのスペースが足りなく、並べるとなると前歯が前に動いてしまう場合、永久歯の抜歯を提案させていただく事があります。

抜歯する歯は、小臼歯と呼ばれる歯であることが多いです。

 

私自身、永久歯を抜くことは決して良いことではないと思っています。ただ、80歳まで20本自分の歯を保つことが全身の健康に繋がるという8020運動の概念でいうと、歯並びが悪く一か所の歯に負担がかかり歯がダメになる、歯が磨けなくて虫歯になる、唇が閉じにくく口腔乾燥症になり歯周病、虫歯になりやすくなるといった事が生じている場合、永久歯を抜くことがあります。

当院では、診断時、可能な治療方法を、医学的に良いと考えられる方法順に順位をつけ提案させて頂き、患者さんの希望とミックスさせ、その方にとって最も良い治療をご提案できるよう努めております。

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