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上下の歯当たっていませんか?~上下歯列接触(TCH)で起こる顎関節や歯への負担~

[2022.05.24]

上下の歯の咬む面(咬合面)が食べる時や話す時以外触れない方が良いことはご存じでしょうか?

 

何もしていない時やテレビや携帯電話を見ている時、料理をしている時など、何の気なしに今自分の上下の歯が触れていないか確かめてみてください。

きっと中には上と下の歯が触れているという方も多いはずです。

 

この上下の歯が長時間触れていることを上下歯列接触癖(TCH)といって、顎や歯にすごく負担がかかると言われています。

上下歯列接触癖あり 上下歯列の接触がある状態

上下歯列接触癖なし   唇は閉じているが上下歯列の接触はない

本来、人間の口や顎の構造として安静時(咀嚼や会話、嚥下、あくびなど口を開けたりしていない時)上と下の奥歯や前歯は少し隙間があり、触れていないのが通常です。(安静位空隙)

 

しかし、この上下歯列接触癖(TCH)を持っている方は長時間上下が接触しており、その状況が慣れてしまい気付いていない方も多いです。

 

偏頭痛や夕方になると頬っぺたの筋肉が疲れてくる方、顎の関節が痛い方、開きにくい方など一度見ていただいた方が良い内容となっています。

 

目次

  1. 上下歯列接触癖(TCH)とは
  2. 上下歯列接触癖(TCH)が引き起こす様々な事
  3. 顎関節症との関わり
  4. 自分が上下歯列接触癖(TCH)か、よくある徴候と簡易的なcheck法
  5. 改善方法
  6. まとめ

 

  1. 上下歯列接触癖(TCH)とは

 

上下歯列接触癖(TCH)は1日のうち20分以上、上下の歯が触れている状態の事と上下歯列接触癖(TCH)で多くの功績を残された木野孔司先生は定義されています。

 

 

だいたい1回の咀嚼で歯が0.3秒接触、1回唾や食べ物を飲み込むのに1.0秒上下の歯が接触するそうですが、それを考慮しても1日平均17.5分しか上下の歯が触れていないそうです。

 

20分を超えると咬むための筋肉が長時間ずっと使用されている状況になり、顎の関節もずっと圧迫されているような状態になります。また、歯にもずっと咬む力が加わり続けているため、歯の周りの骨が痩せてきたり、歯の破折を招くこともあります。

 

  1. 上下歯列接触癖(TCH)が引き起こす様々な事

 

この癖のみで生じることばかりではないですが、以下のような症状を引き起こしやすくなります。

 

ずっと歯を押す事で生じる舌が痛い舌痛症

・慢性的な口内炎

・歯が絶えず圧迫され血流障害がおこることによる咬むときの違和感(咬合時違和感)

・ずっと咬んでいる状態が続き咬む筋肉(咬筋など)や舌の筋肉の疲労が原因で舌や頬粘膜をよく咬む

・歯周病の悪化

・歯冠破折

・よく歯の虫歯処置後に詰めた補綴物や充填物が取れる

・顎関節症

など

 

  1. 上下歯列接触癖(TCH)と顎関節症との関わり

 

 上下歯列接触癖(TCH)は特に顎関節症との関わりも示唆されており、顎関節症の方の半分がこの癖があると言われています(痛みを伴う顎関節症の方だと80%以上の方が上下歯列接触癖(TCH))。顎関節症になりやすい日常の行動としても、①片方しか咬まない②姿勢が悪い③多忙な仕事、デスクワーク④上下歯列接触癖(TCH)とTOP4にはいります。

 

顎関節症の治療で、まず硬いもの噛まない、急に大きな口を開けないなど安静にするという事から治療開始をすると思うのですが、安静にするというのはこの上下歯列接触癖(TCH)を無くし、顎の関節を圧迫するのを控えるというのも含まれています。

 

  1. 自分が上下歯列接触癖(TCH)か、よくある徴候とcheck法

 

・歯の圧痕が頬っぺたや舌にある

・歯がよくすり減っている

・骨隆起と言われる歯槽骨が異常に盛り上がっている箇所がある

 

よく上下歯列接触癖(TCH)が発生する人としては、偏咀嚼といって片側しか噛まない人(リスク2.8倍)、精密作業に従事している人(リスク2.2倍)だそうです。

 

起床時には特に顎周りや歯に疲れがない場合でも、夕方に症状が出る方も上下歯列接触癖(TCH)の可能性があります。ちなみに朝、起床時に顎周りや歯に疲れが生じる方はクレンチング(食いしばり)といって短時間に強い力で上下の歯を噛む癖がある方で上下歯列接触癖(TCH)とは異なる症状です。

 

簡単な検査としては

  • 歯列離開テスト

上体を起こし、口唇を閉じた状態で上下の歯列を離し、上下の歯列を接触させている時とさせていない時どっちが落ち着くかをみるテスト。

落ち着かず、口唇も歯列と同時に開いたり、下顎がガクガク震える方は上下歯列接触癖(TCH)の可能性が高いです。

 

  • 歯列接触テスト

上体を起こし、口唇を閉じた状態で上下の歯列を接触させて筋肉が疲労を感じるかみるテスト。10分くらい接触していても特にストレスなさそうなら上下歯列接触癖(TCH)の可能性があります。

 

  1. 改善方法

 

まず絶対僕たち歯科医師が患者さんに言ってはいけない事が、「上下歯列接触癖(TCH)は良くないから歯を離しておくように」という事です。非常にややこしいのですが、歯を離そうとしすぎると口を開く筋肉も緊張したりして症状が悪化する恐れがあるからです。大事なことは気付いた時に少し上下の歯を離す、それの繰り返しで治していくというものです。しっかりやっていただければ、2~3か月で改善します。

 

step1.

こめかみを人差し指、頬っぺたの下の方を親指で触りながら上下の歯列をくっつけ筋肉が緊張するのを確かめてください。こんなに歯が触れているだけで筋肉が使われているのだなと感じてもらうことが目的です。

 

step2.

10枚以上張り紙で、「歯を離す」「リラックス」「歯を離して力をぬく」など身近なところに出来るだけ貼って、上下の歯が当たっていないかチェックします。上下の歯が当たっていたら肩を大きく上げて鼻から息を吸い込み、一気に口から吐き出し力を抜くことを必ずしてください。その後は、歯を離さなきゃと意識しない方が良いです。また、張り紙をみて触れていたら離すという事を反射的に行うことが大事です。(自分でチェックすることが分かればよいので張り紙に文字を書かなくともシールなのでも結構です)

 

step3.

step2.を繰り返し張り紙を見なくても反射的にチェックするようになってくるのでそこまで続けてください。

 

決して、上下の歯を離さなきゃではなく、チェックの張り紙を見た時だけ意識してくっついていたら離すという事をしてください。

 

6.まとめ

 

今回、このコラムを掲載しようかと思った理由としては、顎関節や歯の負担を軽減するお手伝いが出来ればと思ったのが1点。あと、これは個人的見解ですが、矯正治療を行う時、患者さんに対して、同じ力をワイヤーやマウスピースで歯に加えた際、痛みの感じ方が個人で全く違うのも、もしかすると上下歯列接触癖(TCH)によってすでに歯に負担がかかっている状態から矯正の力を加えると痛みが増すようなこともあるのかもしれないと感じたからです。あと矯正治療でいうと、歯を動かす事でかみ合わせが変わると、上下歯列接触癖(TCH)を助長する可能性があるので、しっかり医師も患者さんご自身でもケアしていかなければならないと思っています。この癖自体は生活のストレスなどでも発症する可能性があるので、上下歯列接触癖(TCH)は良くないことなんだと知っていただくだけでもメリットがあることかと思います。

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